歯科医の診断力を問う
 
 
口の中の問題を正しく診断できる医者はどこにいる?
医療には二種類の役割があります。一つは症状や病気を外側から緩和したり、抑えつけたりする対症療法を行なうこと。もう一つは、患者さんの病気や症状の本当の原因が何なのかを見極め、根本治療を行なうことです。現代医学は、対症療法は得意なのですが、根本治療にはまだまだ多くの課題を残していて、根本治療につながる「診断力」が問われています。

歯科医も、この「診断力」があるかないかで、治療の中身も、患者さんの健康度もまったく変わってしまいます。歯医者自身が、自分は単なる技術屋だから関係ない、という認識で何でもかんでも削っては詰めて、抜いては入れをしているようでは、逆に病気を作り出すようなことになるかもしれません。

私は、一人ひとりの患者さんをきちんと診断し、口の中全体の治療計画を提案して、当院でしかできない仕事をしています。歯を単なる「部分」として診るのではない、全人的な、ホリスティックな歯科医療の考え方とアプローチをして、治療で使う歯科材料、患者さんの口の中に入る物の質を考えて治療をしています。治療の工程にしても、患者さんからは見えないし、きっと分からないから省こう――と思ってしまえばいくらでも省略することができますが、そんなことをしていたら必ず治療の質は落ちます。

やはりいい治療には大事な手順があります、経験も必要です。時間をかけるべきところには時間をかけ、ていねいに緻密に仕上げていかなければいけません。すべてにおいて手を抜けないことばかりです。だから、将来的に大きな結果の違いが現れます。

残っている歯を可能な限り抜きたくない。必ず歯の延命につながるように考えて、治療にあたっています。たとえば乳歯でも見た目のきれいさにこだわります。それが、永久歯になったあと、何十年後の歯の延命につながるからです。患者さん自身が「もうもたない」と思って諦めてしまっている1本の悪い歯でも、一生懸命その歯を残せるように最後まで諦めないで、できる限りのことをします。1本の歯が、あなたの人生を変えます。だから、できるだけあなたの歯を残すこと。それが私の仕事です。

あなたが自分の口の中に興味をもったとき、できるだけ元気なうちに歯と口の中の健康づくりに取り組んで欲しいと思います。治すのは、あなた自身です。治すつもりのない人、歯を重要だと思っていない人にどんなに説明しても、あなたに自覚がなければ、どんなに医者ががんばっても治すことはできないでしょう。

あなたの人生の主人公はあなたです。どんな治療を受けたいかは患者さんが決めることです。私は当院の治療方針を理解してくれて、歯を大切にしたいと思っている人を、一生懸命診ていきます。


常識を疑ってみてください
私の医院は患者さんがたくさん訪れます。歯が悪い、口の中の状態の良くない患者さんばかりです。不具合があるから歯医者に来るのは当たり前だろうという常識、それ自体を疑ってみてください。

口の中にどこにも問題がないけれど、健康な歯と口を維持して病気を予防するために、定期健診やクリーニング、ケアをしに歯医者さんに行くという人は、残念ながらほとんどいません。歯科医として、患者さんの口の中がこれほどひどいというのは、やはり悲しいものです。

私は、歯が悪い人が多ければ儲かるから嬉しい、などという根性で歯科医療をやっていません。どうすれば地域の人の口の中が良くなるか、健康でいられるか、歯の大切さを分かって自分の歯を大事にしてもらえるかを真剣に考えてきたのです。

場当たり的に歯を次々治していっても、悪くなる原因を放置したままでは、時間がたてばまたどこか悪くなってしまう。いい治療を受けていれば少しは違いますが、初診で来られる患者さんの口の中を診れば、他の医院で本当に質の高い治療をしているとは言えません。

歯というのは、削ったり抜いたりすれば二度と元には戻せないのです。その重みを知れば知るほど、不具合が出てきて、痛くなったらその都度「保険でささっと治してもらう」という歯医者さんのかかり方では、いずれあなたの口の中がボロボロになって、健康を損なってしまうでしょう。

私は、患者さんの歯を診断するとき、問題のある患者さんにはフルマウス(口の中全体のトータルな治療)の治療をおすすめしています。元気でいくつになっても若々しいあなたの人生のために、私たち歯科医に出来る本当の仕事とは何かを考えたときに、「全身のことを考えたトータルな歯科治療」というところにたどり着きました。悪くなった部分「だけ」をきちんと治療すればいいという考えではなく、患者さんの将来のことを考えて、予防歯学とホリスティックな視点をもって口の中をトータルに診ることのできる歯科医は、全国でもそう多くないと思います。

体の一部だけ、たとえば「肝臓だけは病んでいるけど、他はピンピンしていて私は健康だ」ということがないのと同じで、「歯周病で口の中が細菌だらけだけど、他は問題がないから私は健康だ」ということもないのです。この場合、歯周病を治せば全身の健康状態も向上しますし、反対に、全身の健康状態が向上すれば、それにともなって歯周病も治癒していくことが往々にしてあります。

そういう全人的な視点で口の中を診ることができれば、部分だけを診ていてはできない診断ができるようになります。治療は診断に基づいて立案、実施されるので、診断の良し悪しが治療の成果を左右することになるのは当然のことです。人間を全体として診れば、至極当たり前で、本来的な診断になるでしょう。


歯科医とスタッフの、医療と患者さんに対する姿勢が今、問われている
全身のことを考えたフルマウスの治療を提案するとき、自費治療が含まれることもあります。
保険で間に合わせの治療をするのと、自費でしっかり治療することを単純に比較すると、患者さんの経済的負担は一時的に大きくなります。「治療費が高くなるから・・・」という理由で治療を拒否する患者さんもたくさんいました。

今ちゃんと治療しておくことで、結局長い目で見たときに、生涯で支払う医療費の額が全く変わってきます。今この治療をきちんとするかしないかで、将来の健康度が大きく変わってくるからです。元気で若々しく齢を重ねて明るい健康的な人生を送るのと、歳とともに(時には年齢以上に)老化が進んで体のあちこちに不具合が出て、「あそこが痛い、ここがつらい」と毎日こぼす人生を送るのと――いつか大病でもすれば、それこそ大変なお金がかかってしまいます。

歯と口は、私たちの健康と密接に関わりあって成り立っているのです。
私の医院で働いてくれているスタッフも、一生懸命、患者さんのために「良くしよう」とがんばってくれています。いい仕事をし、患者さんが本当に喜んでくれることがなにより嬉しいようです。それがあるから、私も歯科のプロとして誇りとやりがいをもって、毎日がんばれるのです。

私も、自分のことを大事にする前向きな患者さん、私たちの考えに共感して一緒に治療をがんばってくれる患者さんとの出会いが今一番うれしいことです。毎日、自分ができる精一杯のことをしようという意欲がわいてきます。

私たちは患者さんの歯をなんとか助けてあげたい、口の状態を良くしてあげたいと思っています。健康に関わることですから、次善の歯科医療などは本当はありません。患者さんのための最善と思えることをしても、まだ充分でないとさえ思っています。だからこそ中途半端な治療はしたくない。いつもさらにもう一段上の治療が提供できるように、自分の意識も腕も、磨き続けていきたいと思っています。


私がたどり着いた答え
一日に50人を超える患者さんをさばくように診ていた時期があり、信念に基づいて自分の診療スタイルを貫く素晴らしい歯科医との出会いがあり、歯を大切にできなかった患者さんとの出会いがあり、歯を大切にしてくれた患者さんとの出会いがあり、あなたとの出会いも含めて私がたどり着いたのは、「自分自身を大事にする心のある患者さんにこそ、最善の治療を一生懸命したい」というシンプルな答えでした。

私はどんな治療にも、どんな工程にも妥協したくありませんし、一切手を抜きません。だから、時間がかかることもあります。

全身やあなたの人生に影響を与える歯科治療は、数ミクロンという、肉眼では見分けのつかない世界です。非常に高い技術力と、時間をかけたていねいな治療を必要とします。にもかかわらずやたら早い治療は、「雑に扱われ」「精度の低い」治療をされてしまっているのかもしれません。患者さんの将来を思えば、手を抜くところなどどこにもありませんし、時間もそれなりにかかります。

歯医者が患者さんの歯を触るということは、あなたの歯と将来が変わる、大きな分岐点なのです。健康を左右するということは、その人の人生をも左右します。それくらい歯医者の仕事は重みがあるのだと考えて、ちょうどいいと思います。

「あなたが私の家族だったら」
そんな思いで、いつも治療をしています。