私は歯科医です。これまでに何百人、何千人という患者さんとかかわってきましたが、歯の大切さは残念ながら多くの患者さんには伝わりませんでした。「歯なんてどうでもいい」という患者さんを診るのは、歯科医としてはとてもやるせない気持ちになります。患者さんから「どうせ先がないから」「もう歳だから」と言われると、とても悲しい気持ちになります。考え方と行動一つで、あなたの人生がより良いものに変わることを私は知っています。歯科医である前に私もあなたと同じ人間ですから、あなたにいい人生を送ってもらい、あなたの喜びをエネルギーに変えて仕事をしたいと願っています。
歯は、一度削ったり抜いてしまったら、二度と再生しません。患者さんのために、今考えられる最善の治療をしても本当は足りないくらいです。人工的に処置して、人工の物を歯に詰めて代用しようとするのですから当然です。歯や口は生きている人間の一部なのですから、天然の自分の歯より優れたものなどあり得ません。
歯はただ食べるために存在しているのではなく、健康にとってとても大事だと考えています。
私は、歯科医として仕事の質にこだわっています。それは正しいことだと信じていますが、でも実は、ある意味間違っていたのかもしれないと、最近になって気付きました。なぜなら、「前向きに健康のことを考えて、歯を大事にし、充実した快適な人生を送りたい、幸せになりたい」という患者さん自身の意識を目覚めさせることができなければ、どんな名医だろうと無力だからです。
私は、どんな患者さんにでも妥協せずにていねいに治療してきました。たとえ保険の範囲を超えていても、保険の範囲の治療費しか請求しないことも多々ありました。良かれと思ってしていることですが、それで本当にその患者さんが幸せになって、ずっと健康でいられるかというと、それはどうも違うようだという――私の独り相撲というか、空回りしている感が、いつも付きまとっているのです。
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